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肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス、プレベナー)・高齢者費用助成
Pneumococcal vaccination
肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス、プレベナー)・高齢者費用助成
三田国際ビルクリニックでは、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)を取り扱っています。
肺炎球菌感染症や予防のためのワクチン、港区助成についてご説明いたします。
※港区では高齢者肺炎球菌定期予防接種の費用一部助成制度があります
(https://www.city.minato.tokyo.jp/hokenyobou/seijinhaienkyuukinteiki.html)
- - 肺炎球菌感染症とは?
- - 肺炎球菌感染症の治療は?
- - なぜ65歳以上の高齢者で肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)が重要なのか?
- - 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)はどちらを選べばいい?(違い・スケジュール)
- - 米国における最新の肺炎球菌ワクチンの接種について
- - 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)の費用・予約方法は?
- - 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)の港区費用助成を受けるには?
- - 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)の副反応は?
- - 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)のよくある質問
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肺炎球菌感染症とは?
肺炎球菌感染症は、肺炎球菌という細菌に感染することで引き起こされる病気です。肺炎球菌は無症状のまま鼻やのどに定着していることが多いものの、免疫力の低下などをきっかけとして、肺炎、敗血症、髄膜炎、中耳炎など重篤な感染症を引き起こします。特に肺炎は、日本人の死因の第3位を占めていますが、肺炎の原因菌として最も多いのが肺炎球菌であり、成人の肺炎の1/4-1/3は肺炎球菌が原因と考えられています。また、肺炎球菌が血液や髄液など本来無菌であるべきはずの領域から検出される重症感染症を、侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease: IPD)と呼び、1歳以下や50歳以上に多く報告されています。
肺炎球菌は1歳児の3-50%, 保育施設園児の80%以上、成人の3-5%が保菌していると報告されており、気道の分泌物や唾液などを通じて飛沫感染するため、本邦ではIPD予防を目的に小児の肺炎球菌ワクチン(プレベナー)の接種が行われています。最近では抗生物質が効きにくいタイプの肺炎球菌も増えてきており、ワクチンによる予防が重要と考えられます。
肺炎球菌感染症の治療は?
肺炎球菌感染症の治療には、ペニシリン系の抗菌薬が使用されることが多く、通常は内服薬で治療しますが、重症の場合は点滴で治療されることもあります。近年、ペニシリンに対する耐性をもつペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae: PRSP)が増加しつつあり、治療抵抗例・重症化例が問題となっています。
なぜ65歳以上の高齢者で肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)が重要なのか?
肺炎球菌は成人の3-5%が鼻やのどに保菌していると報告されており、無症状で経過することも多いものの、免疫の低下やインフルエンザなどの感染症による気道粘膜の損傷を契機に肺炎を発症する(二次性肺炎)したり、重症例では菌血症や髄膜炎などの侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease: IPD)を生じることが知られています。特に糖尿病や心臓病などの持病がある方や加齢とともに免疫能の低下する高齢者では肺炎球菌感染症のリスクが高くなります。また、2歳未満の乳幼児も免疫機能が未発達なため、感染リスクが高くなることが知られています。これら高齢者を含むハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチンの接種により、肺炎球菌性肺炎および侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発症・重症化予防効果が期待できます。
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肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)はどちらを選べばいい?(違い・スケジュール)
本邦で使用可能な肺炎球菌ワクチンには、ニューモバックスNP、プレベナー13の2種類があります(2023年1月時点)。肺炎球菌には約90種類ほどあり、ニューモバックスNPはそのうち頻度の高い23種類、プレベナー13は13種類について予防します。そのため、ワクチンによりすべての肺炎球菌の予防が可能なわけではなく、ワクチンの普及とともにワクチンがカバーしていない種類が台頭してくることが知られており、これを血清型置換(serotype replacement)と呼びます。今後の流行状況や時世により、新たなワクチンが使用されるようになる可能性もあります(後述しますが、すでに米国では新規ワクチンが使用されています)。 ニューモバックスNP、プレベナー13いずれも有用なワクチンであり、どちらが優れているか現時点で明確な結論は出ていません。個々の事情に合わせていずれかのワクチンを選択いただくか、より高い免疫効果を期待される方は両方のワクチンを打てるようにスケジュールを計画されることをおすすめします。
ニューモバックスNP (pneumococcal polysaccharide vaccine23: PPSV23) |
プレベナー13 (pneumococcal conjugate vaccine 13: PCV13) |
|
---|---|---|
含有莢膜抗原の数 | 23 | 13 |
含有莢膜型 | 1, 2, 3, 4, 5, 6B, 7F, 8, 9N, 9V, 10A, 11A, 12F, 14, 15B, 17F, 18C, 19A, 19F, 20, 22F, 23F, 33F (プレベナー13に含まれない型) |
1, 3, 4, 5, 6A, 6B, 7F, 9V, 14, 18C, 19A, 19F, 23F (ニューモバックスNPに含まれない型) |
ワクチンの種類 | 多糖体(ポリサッカライド)ワクチン | 結合型(コンジュゲート)ワクチン |
抗体を作らせる能力 | 低い | 高い |
効果の持続 | 短い | 長い |
再接種の必要性 | 5年以上あけて再接種 | 不要 |
費用助成の有無 | あり(定期接種対象年齢で1回限り) | なし |
対象者 | (2〜64歳)、65歳以上 | 2か月以上6歳未満、65歳以上 |
接種方法 | 皮下注射あるいは筋肉注射 | 筋肉注射 |
まとめると、
・ニューモバックスNP → カバー範囲が広い、5年間隔で再接種が必要、定期接種年齢で公費助成あり
・プレベナー13 → 免疫誘導能力が高い、1度の接種で完了、自費接種
となります。
ニューモバックスNPは多糖体(ポリサッカライド)ワクチンであり、PPSV23(pneumococcal polysaccharide vaccine23)とも略されます。これに対して、プレベナー13は結合型(コンジュゲート)ワクチンであり、PCV13(pneumococcal conjugate vaccine 13)と略されます。
多糖体ワクチンでは、免疫応答に関与する細胞の種類が少なく、B細胞が多糖体を認識して抗体を産生する形質細胞に変化します(細胞の性質が変化することを「分化」と呼びます)。
これに対して、結合型ワクチンは、多糖体に無毒性ジフテリア毒素を「結合」させる修飾を加えることで、B細胞以外の樹状細胞・T細胞が抗原認識を行い、T細胞がエフェクターT細胞に分化、B細胞を形質細胞だけでなく、メモリーB細胞に分化させます。このT細胞依存性の免疫応答・メモリーB細胞により、「免疫記憶」が形成され、より強力で長期の免疫を獲得することが可能になります。多糖体ワクチン(ニューモバックス)では、メモリーB細胞が関与しないため、免疫記憶が成立せず、5年ごとの再接種が必要となります。
ニューモバックスNP(PPSV23)が広範な種類をカバーすること、プレベナー13(PCV13)が免疫記憶を有することから、両ワクチンを組み合わせることでより強力な免疫を獲得できると期待されています。特にプレベナー13(PCV13)の接種後にニューモバックスNP(PPSV23)を接種することで、プレベナー13・ニューモバックスNPで共通の12種類の肺炎球菌予防のブースター効果も期待できると言われます。
※ニューモバックスNP(PPSV23)の後にプレベナー13(PCV13)を接種しても、ニューモバックスNPは免疫記憶を誘導していないためブースター効果はありません。ブースター効果はあくまで、プレベナー13の後にニューモバックスNPを接種した場合に期待ができる効果です。
ニューモバックスNPは当該年度末に65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 100歳であり、初回接種の場合は定期接種として公費助成を受けることができます。
A. ニューモバックスNP未接種で定期接種に該当する方
まずは定期接種としてニューモバックスNPを接種ください。その後、5年以上間をあけてニューモバックスNPを再接種する(5年以内ですと副反応が強く出る場合があります)か、1年以上あけてプレベナー13を接種してください(1年以上あけることで接種の安全性が担保されます)。プレベナー13を接種した場合、6か月から4年以内のニューモバックスNPの再接種も有効です(両ワクチンに共通な12種類の血清型特異抗体のブースター効果が確認されているのがこの期間となります。それ以上の接種間隔を空けた場合のブースター効果についてはエビデンスが示されていません)。
B.ニューモバックスNP未接種で定期接種に該当しない方
ニューモバックスNP、プレベナー13いずれを接種しても構いません。
より強力な免疫獲得を早期に目指す場合は、プレベナー13を先行して接種することをおすすめします。
C. ニューモバックスNP接種済みの方
5年以上間をあけてニューモバックスNPを再接種するか、1年以上あけてプレベナー13を接種してください。
プレベナー13を接種した場合、6か月から4年以内のニューモバックスNPの再接種も有効です。
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米国における最新の肺炎球菌ワクチンの接種について
米国ではすでに本邦で使用されているプレベナー13(PCV13)よりも広範囲な種類をカバーするPCV15 (Vaxneuvance)、PCV20 (Prevnar 20)が使用されています。米国疾病管理予防センター(CDC)の予防接種の実施に関する諮問委員会Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) は、65歳以上の高齢者を含む肺炎球菌ワクチン接種の適応があるすべての患者に対して、PCV20単独またはPCV15とPPSV23の連続投与を推奨しています。本邦でも2022年末にMSD社がPCV15(バクニュバンス®)の製造販売承認を取得しており、今後本邦においても肺炎球菌ワクチン接種のあり方が見直される可能性があります。
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肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)の費用・予約方法は?
種類 | 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP) 肺炎球菌ワクチン(プレベナー13) |
---|---|
対象 | 65歳以上(接種日時点) |
検査日時 | 平日15:00〜17:15(平日午前の接種は原則、健診・人間ドックとの同時受診の方に限ります) 土曜 8:30〜12:15 |
所要時間 | 15-30分程度 ※状況により待ち時間が生じる場合があります。 |
持ち物 | 本人確認書類(マイナンバー(個人番号)カード、運転免許証、健康保険証等) 港区助成の対象者は、区から届いた専用の予診票 |
費用 | ニューモバックスNP 7,500円(税別) プレベナー13 10,000円(税別) <港区の助成利用> ニューモバックスNP 自己負担1,500円 |
予約方法 | Web・電話(Web予約優先) |
注意点 | 港区の助成対象者は、区から届いた専用の予診票が必要です |
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肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)の港区費用助成を受けるには?
費用助成の対象者は、公費・自費を問わず過去に一度も肺炎球菌予防接種(23価)を受けたことがない人で、下記1または2に該当する人
1.年度末(3月31日)に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の人
2.接種日現在、60歳から65歳未満で、以下の障害の等級が1級の身体障害者手帳を所持している方
・心臓機能障害
・じん臓機能障害
・呼吸器機能障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
※自費であっても過去に肺炎球菌予防接種(23価)を受けたことがある人は、予防接種予診票が届いたとしても補助を受けることはできません。
詳細は、港区のHPをご確認ください。予防接種予診票がお手元にない場合、みなと保健所保健予防課保健予防係にご申請ください(03-6400-0081)。
肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)の副反応は?
接種部位の痛み・赤み・腫れ、筋肉痛、だるさ、発熱、頭痛などの副反応が出現する場合があります。多くは数日以内に自然軽快します。
肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP、プレベナー13)のよくある質問
- Q. 過去にニューモバックスNPを接種したことがありますが、定期接種を受けられますか?
- A. 定期接種(公費助成)の対象とはなりませんが、自費で接種を受けることは可能です。
- Q. 過去に肺炎になったり、肺炎球菌感染症にかかったりしことがあるのですが、定期接種の対象者になりますか?
- A. 過去に肺炎や肺炎球菌感染症にかかっていても、定期接種の対象になります。
- Q. ニューモバックスNPの接種歴があるのに、誤って再接種してしまいました。どうしたらいいでしょう?
- A. 過去5年以内にニューモバックスNPを接種した方が再度接種された場合、注射部位の疼痛、紅斑、硬結などの副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現すると報告されています。接種医療機関で相談されてください。
- Q. ニューモバックスNPは何回まで繰り返し接種できるの?
- A. ニューモバックスNPは5年以上の間をあけて繰り返し接種することが有効です。一般に1-3回接種される方が多く、海外においては、3 回、4 回目の接種についても、2 回目接種と同程度の安全性が確認されています。それ以上の接種については有用性や安全性を明確に示した報告はありませんが、添付文書上は回数の制限はありません。